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東京地方裁判所 昭和50年(ワ)9768号 判決 1979年4月10日

原告

初台ハイツ管理組合

右代表者

野崎正蔵

右訴訟代理人

山田俊昭

名城潔

被告

日本保証マンシヨン株式会社

右代表者

川合寿人

右訴訟代理人

井上福太郎

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

<前略>

四そこで、被告の主張から順次検討する。

1  被告は、もと本件マンシヨン全部を所有していたが、三階以上の建物区分所有権を他に売り渡したこと、被告がもと本件マンシヨンの管理者であつたが昭和四九年九月に退任したこと、そして、被告が昭和四八年二月ごろから共用部分である本件広告塔を大化産業に利用させていることは、いずれも当事者間に争いがない。

右争いのない事実と<証拠>を総合すれば、本件マンシヨンは、昭和四七年八月ごろ完成したこと、被告は、そのころから一〇月ごろにかけて、一、二階を除く建物区分所有権全部を売却したこと、その売買に際し、被告作成の共通の売買契約書、管理規約書、管理委託書をもつて買主全員と契約したが、右売買契約書第二五条第一、二項、管理規約書第一八条第一項には被告主張の各約定が明記されていることが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  原告は、被告の本件広告塔の専用利用権が被告の管理者たる地位において認められたものであると主張する。しかし、右売買契約書、管理規約書によれば、被告の右専用利用権は、区分所有者で売主たる被告と買主との間で、区分所有者たる被告として認めたもので、管理者たる被告として認めたものではないことが明らかであるから、原告の右主張は理由がない。

また、原告は、買主と被告との右専用利用権に関する合意は買主の錯誤により無効であると主張するが、本件全証拠によるも右錯誤の事実を認めることはできない。

3  原告は、右専用利用権の合意は法の理念に反し無効であると主張するので、以下この点について検討する。

本件広告塔が共用部分であることは前記のとおり当事者間に争いがなく、建物の区分所有等に関する法律第九条は、各共有者が共用部分をその用法に従つて使用することができる旨規定し、同法第八条によるも、第九条に関しては規約で別段の定めをすることが認められていない。従つて、共用部分について合理的な理由もないのに、共有者の使用を禁ずることは右第九条の規定に反して許されないものといわなければならない。しかし、共用部分の中には、廊下や階段のようにその使用が共有者の専用部分の使用に不可欠のものと、建物の壁面とか機械室の屋上部分のようにその使用が共有者の専有部分の使用に必ずしも不可欠とはいえないものがある。そして専有部分の使用に不可欠な共用部分の使用を禁ずることは建物の区分所有権を認めようとする右法律の立法趣旨に抵触して許されないこと明らかであるけれども、専有部分の使用にさほど支障をきたさない共用部分について、一部共有者の使用を制限することはその共有者の同意がある限りこれを許してさしつかえないものというべきである。従つて、このような専有部分の使用にさほど支障を与えない共用部分については、同法第二三条、第二四条所定の規約によつて、一部の共有者の使用を認めないで他の共有者の専用利用を認める規定を設けることも許されるものと解するのが相当である。<中略>

4  そうすると、被告が本件広告塔の利用によつて、たとえ利益を得たとしても、その利得は法律上の原因を有するものというべきである。

五以上の次第で、原告の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(小川正澄 若林昌俊 中嶋秀二)

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